Tuesday, October 10, 2006
核との共存

またエラくカタいタイトルになってしまいましたが、10月9日、北朝鮮がプルトニウム型原爆の核爆発を伴う実験を行ったので、それについてちょっと。
ちなみに、プルトニウム型ってのは広島、長崎に投下されたものと同種のもので、核爆発を伴う実験とは、どこで核分裂連鎖反応が起こるかを確認するために行うギリギリ寸止めの臨界実験ではなく、実際に爆発があったという意味です。

1986年のチェルノブイリ以来、兵器としての核だけでなく原子力発電所における事故に対しても世界中で恐怖感が高まり、核の是非がより一般的に問われるようになった気がします。また、それに続いて翌年の1987年、日本では広瀬 隆氏の著書「危険な話」が出版されてベストセラーになりました。
実はあたしもこの頃に広瀬氏の公演を聞きに行き、なんつったって10代の熱い時期でしたから、「核ダメ。ぜったいダメ。核は悪」と心に刻み込んでしまったのですが、正直な話、今の日本で50機以上ある原子力発電所の稼動をすべて止めたら、工場の生産ラインがストップして生産力が落ち、経済的に大きな打撃を受けることになるんじゃないでしょうか。
まず娯楽のための電力消費は1番先に廃止対象になるだろうから、ディズニーランドのパレードなんか言語道断。

それどころか、コンビニのレンチンが有料になるかもしれない。

しかも電気は利便性とも直結しているので、めんどくさいことが次々と起こりそうな予感がします。残業なのに終業時間が過ぎたら会社のエレベータが全部止まるなんてことになったら地獄。
また、繁華街のネオンや巨大ヴィジョンなんかもそりゃあムダでしょうが、今度あたしが日本に帰ったとき、街に灯りがなかったらやっぱり悲しくなると思うんですよ。下世話でセンスのないネオンも、あたしの中では大切な故郷のアイコンですから。
ま、こんな風にムダな電気ですら生活や環境の一部になってしまうと、今度は節電が非常に難しいタスクになります。

つまり、「原子力発電は危ないから反対」と言うのは簡単だけど、現実問題として"原発のない生活"を実現するには、ライフスタイルの改革が必要不可欠。でも、これだけ加速してしまった日本の電力消費グセは、そう簡単に改善できない気がします。
じゃぁ、平和利用ってことで原発は現状維持して、核兵器の生産や使用に対して反対すればいいんじゃないのってことになりそうですが、これもまた難しい。

軍事ジャーナリストなんかの記事を読んでいると、技術力の向上でミサイルの軌道が精密に調整できるようになった現在では、広範囲に渡って何もかもぶっ壊す大型の爆弾より、ピンポイントで必要なターゲットのみを破壊する兵器がトレンドとか。ところが、その気になれば地球を壊すことだってできる核爆弾は"持っていれば安心できる切り札"として、所有希望国が後を絶ちません。
あたし程度の知能だと、「いくら核爆弾持ってても、こっちが打ち込んだとたんに相手も打ち返えしてきたら共倒れじゃん」としか思えないんですが。ま、核爆弾は民間人を巻き添えにして抹殺する、ある意味民族一掃兵器みたいなもんですから、将来、どのへんの国が実際に使うことになるかは想像できますけどね。

や、北朝鮮が実験するとは思ってなかったですけど。

だいたい将軍様の言うことはあまり信憑性がないので、80年代にロシアから輸入された小型原子炉と、1998年にパキスタンから買ったウラニウム濃縮用の機材を使ったとしても、実際に起爆可能な状態の核爆弾があるかどうかは疑問だったんですよ。
んだもんで、韓国発表の第一報が入っても、北朝鮮オフィシャルで声明文が発表されてもイマイチ信用できなかったんですが、その後、各国の首脳からコメントが出たのでやっと信じる気になりました。
北朝鮮はこれで外交カードが全部なくなったと言われているようですが、最近は中東との結びつきも強いし、イラン、シリアあたりとタッグを組んで、何かをたくらんでいるような気もします。国連事務総長に新任された韓国人の潘さんがどれくらい影響力を持っているのかも未知数だし、ますます行方はわかりません。

そういえば今回の核実験で、学生の頃、「君も原水爆禁止日本国民会議に参加しないか」と誘われたことを思い出しました。いわゆる原水禁ってやつですね。そこでオフィシャル・サイトを訪ねて同会議による声明を読んだんですが、なんだかもうガックリですよ。
北朝鮮の実験は、「軍事大国化をめざす小泉・安部政権の軍事的・政治的・経済的圧力の強化の結果」だそうです。なんでも人のせいにすりゃーいいってもんじゃない。っつーか、ここはそういう団体だったのか。

「軍国主義の日本を潰せ」ってのは、中国と韓国の若者も反日デモでプラカードを掲げていましたが、実際、軍事大国化と聞いても日本人にはあんまりピンときません。じゃぁ、彼らはなぜ日本を軍国主義と呼ぶのか。
ま、もちろん過去の大戦を意味している部分もありますが、実際には憲法9条の改正をやめろってこと。これには国連安保理の議席数が複雑にからんできます。

ええと、国連安保理は5つの常任理事国(アメリカ、フランス、イギリス、ロシア、中国)と、加盟国の中から総会で選ばれた10の非常任理事国で構成されているわけですが、日本が常任理事国になるためには、憲法9条を改正していつでも派兵できる状態になることが必須と言われています。これまでの"戦争はしない、戦力は持たない"という枠を外すことになるんですね。それを機に核保有もあるかもしれない。この、日本がいつでも戦争できる状態になるってのが中、韓にとってリスクになることが理由のひとつ。

ふたつ目は、日本が常任理事国になることで得る権力への抵抗。
国連安保理では常任理事国にのみに拒否権が与えられ、議会の決定の際、常任理事国が1国でも拒否権を施行したら決定できないことになってます。つまり、満場一致じゃないと議会決定ができないんですね。そこに参加するということは、各国に対して大きな影響力を持つことになります。「経済的に有利な方向に持っていくから、拒否権使ってウチの国を救ってくださいよ」なんてスリよってくる国から、オイシイ思いができたりするわけです。
ちなみに、日本は今年で2年の任期が終り、連続再選は禁止されているので、数年先まで非常任理事国として再選されることはありません。

ああ、原子力発電を否定するのは現状では難しいし、北朝鮮がバカをすれば日本のせいだと責められるし、国として国際社会での有利な立場を望めば憲法は改正されそうだし、核はロクなことがありません。
とりあえずあたしにできるのは、観てないクセに旦那がつけっぱなしにしてるテレビを消して、ささやかな節電をすることぐらいですかね。ニュージーランドは非核保有国なんで、原発もないですが。



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3 comments:

Envy said...

> ChaChaさん
ロシアと中国もドン引きしてたし、「これは北朝鮮終了のお知らせではないか」と思いましたが、軍事制裁は一応回避されたようですね。
というか、早まった行動で北朝鮮を刺激できないオソロシイ理由があるじゃないかと逆に心配になってきました。

あたしは言葉の持つパワーを信じて疑わないので、北朝鮮上空から「世界は広いのだー」的なビラや写真を撒くだけで内側から崩壊しちゃうような気がします。クラシックな攻撃方法ですが。
ああ、でもゲリラとなると民間人の血が流れるな・・・。

こちらでもガソリンの高値が毎日のようにニュースになってます。ホント、どーなっちゃうんでしょうね。

10/16/2006 11:26 pm

cavacavien said...

>あたしは言葉の持つパワーを信じて疑わないので、北朝鮮上空から「世界は広いのだー」的なビラや写真を撒くだけで内側から崩壊しちゃうような気がします。

これがいいね~。
実際のところ、ヨードの錠剤買った友人もいます。子供に強く影響するのはチェルノブイリで学習済みだもんねえ
・・・ったくもう!

10/26/2006 5:57 pm

Envy said...

> Cavacavienさん
チェルノブイリで思い出したんですが、ウクライナ出身で核物理学者の娘、エミリーさんという方が、チェルノブイリ原発付近をバイクで走りぬけた際の写真などを報告サイトで掲載しています。
廃墟になっている爆心地付近の街の様子とか、見てるだけでコワいです。
あたしもKawasaki派の女性ライダーですが、あんなとこをひとりで走るなんて、考えただけでもチビりそう。
こんなことは絶対に繰り返されてはならないと、このサイトを見るたびに思います。

10/26/2006 10:53 pm